佐渡の夏、姫甘泉との出会い
今回選んだのは、佐渡産の小玉スイカ「姫甘泉(ひめかんせん)」です。砂丘地で育てられたこの品種は、糖度13度以上に達する濃厚な甘みと、強いシャリ感が特徴。皮のギリギリまで果肉が詰まっており、種が少なく、食べた瞬間に口いっぱいに広がるジューシーさが際立ちます。
ただ甘いだけではない。みずみずしさの中に、スイカ特有の青みを帯びた香りが同居している。そこに、私たちは可能性を感じました。
スイカを副原料として使う上で、最初に直面したのは「どうすれば果実感を損なわずに酒に溶け込ませるか」という問いでした。スイカの香りは揮発しやすく、熱や発酵の過程で失われやすい。単純に果汁を加えるだけでは、醪の中で香りが飛んでしまいます。そこで今回試みたのは、二段階のアプローチです。もろみの一部を濾したもの(にごり成分)と、上槽後に絞り出した澄んだ酒を合わせるという製法を採用しました。発酵の途中で果実感を閉じ込めたにごり部分と、澄んだ酒が持つ骨格を組み合わせることで、スイカの果実感を最大限に引き出すことを目指しました。
生酒:醸したままの、果実の息吹
通常の日本酒は、品質を安定させるために火入れ(加熱処理)を行いますが、「生酒」はそれを一切行いません。そのため、酵母や酵素が生きたまま瓶詰めされています。
グラスに注ぐと、淡く白濁した液体が揺れます。スイカの果汁を思わせる、青みがかった甘い香りが立ち上ります。
夏の縁側でスイカを割った瞬間のような、あの無防備な香りです。口に含むと、フルーティーなSAKEの土台の上に、姫甘泉のやわらかな甘みと果実感がふわりと広がります。
主張しすぎず、しかし確かに存在する——スイカがSAKEの中で自分の居場所を見つけたような、心地よいバランスです。
グラスを傾けると、淡い白濁の中に夏の光を閉じ込めたような、みずみずしい輝きがあります。香りは、スイカ特有の青みを帯びた甘い果実香が前面に出ながら、SAKEの発酵由来の柔らかなニュアンスが背後で支えています。
重くなく、軽やかで、夏の空気のような開放感があります。口に含むと、甘みと果実感が滑らかに広がり、後半にかけてすっきりとしたキレが訪れます。
スイカの甘さがくどさに転じることなく、SAKEの骨格の中に溶け込んでいます。余韻は短く、清涼感とともに消えていきます。飲み干した後に残るのは、夏の記憶のような、淡くて心地よい残像です。
FLAVOR NOTE
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